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ナカムラは自分のことを科学者のはしくれ(*)だと思っている。そして科学者は真実を探求する,はずだ。だからナカムラは真実しか語らない,はずだが …。まあ,ときにはここの大文字の部分のような他愛のない嘘はつくが,その場合はすぐに嘘であることをばらすので,害はないでしょう --- などと書くのは,今から書く話を友人などに話すと「おまえ,それ,話をつくっとるやろう」とよく言われるからである。天地神明にかけて誓うが,これは本人から直接聞いた話,ナカムラはひとかけらの脚色もしていない。 *「はしくれ」という言葉が妙にしっくりくるのも困ったもんだが。 というわけで,今回は「雪男」の話,かと思うとそうではなくて,勘違いの話である。かく言うナカムラも,「パパちち」ほどではないけど,その手の勘違いは結構あった(*)。今でも憶えているのは「出不精」のことを「デブ性」,つまり太った体質のことだと思っていたというやつだ。そう信じて生きていると,なかなか訂正されることがなくて,たとえば,友人同士であそびにいこうとかいったときに:
「あれ,あいつはこないの?」 などという会話をきいても,「ああそうか,太ってるから遊びにくるのがおっくうなのか,でも,そんなに太ってるっていうほどでもないけどなあ,精神的に太ってるってことかな」などと納得してしまう。よく考えると「精神的に太ってる」なんて,とっても意味不明なんだが。 *ちょっと不安なのは,実はいまでも勘違いしていることってあるんじゃないかな,ということ。そのうち,どっかで大恥さらすんじゃないだろうか。ナカムラがお世話になったある大学教授は,定年退官されるまで(そしておそらくは今でも)「悪酔い」のことを「あくよい」と読んでいらっしゃった。
だが,実は,圧倒的に多くの人が,間違いに気づく機会なく,墓場までいってしまうという言葉が実はあるのである。なにか?「女王」の読みである。と,書くと,もうそんな話はよく知っているよ,という人以外は,「え,そんなん“じょおう”じゃないの?」という人と「それは“じょうおう”でしょう」という人の二通りに分かれるはずだ(「そんな字,読めまへん」という人もいるでしょうね)。
実は人間というのは会話のききとりで,相手の発音を一音一音聞いている訳ではなく,全体の文脈から適当に想像して自分の語彙の中にある単語にあてはめて会話を理解している。アメリカで行われた心理学の実験で,地図に関する文章の「map」という発音をすべて「nap」に置き換えて読んでも,聞かされた人間はほとんど全く気が付かないという報告があるそうな。だから,たとえば,あなたが“じょおう”派だったとして,会話のなかで,相手が“じょうおう”と言っても,「ああ,“じょおう”と発音してるんだな」と理解してしまって違いに気づかない。 では,なぜナカムラはこの隠れたる二大派閥 --- プラス少数派の「読めまへん」--- の存在に気が付いたかというと,コンピューターで「女王」と入力しようと思ったからだ。ナカムラの使っている漢字変換プログラム(以下「FEP」と略す)はATOK11なのだが,これだと“じょうおう”--- ナカムラは“じょうおう”派だった --- といれると「貞応」,「承応」とでてきて「女王」にはたどりつかない。ということは,コンピューターで文字処理をするようになった最近では,この闇の二大派閥(プラス少数派「よめまへん」:しつこい)の存在に気づく人間がすこしづつ増えてきているのであろう。しかし,もし,FEPのメーカーの多くが“じょうおう”でも「女王」と変換するようにプログラムをつくるようになってくると,また,この派閥の存在は闇から闇へ消えてしまうにちがいない。
と,ここまで考えてくると,FEPメーカーの日本語への影響力って大きいですよね。しかもFEPメーカーってそんなに数はない。いま,メジャーどころと言えばATOKとIMEと「ことえり」くらいしか思いつかないが他にあるのかな? VJEってまだ生きてる? ある試算によれば,現在,日本国中で読まれている文章の93%はコンピューターやワープロなどで電子的につくられたものだそうだ --- なんて嘘にはもう,みなさん,だまされないでしょうが,でも,とにかく,今は電子的につくられた文章の量は圧倒的である。しかも,その中の多くは上述の三つのFEPのどれかを使っている。ということはマイクロソフトとアップルとジャストシステムの三社が共同して日本語を変えようと結託すれば,ある程度はいくんじゃないか。 *これって,前回ちょっとふれた,必要のないソフトウェアの機能の追加の<<「の」の連続>>いい例ですよね。
もともと,日本語の規範というのは諸橋大漢和辞典とか広辞苑とかの影響が強かったが,これらは偉い国文学者の先生方が編纂されていたわけである。最近までは,それに加えてマスメディアの影響というのもあった。「破廉恥」という単語は永井豪の「ハレンチ学園」以来,意味がかわってしまったし,ビレッジピープルの「マッチョマン」によって,「マッチョ」という単語は日本語になった。で,コンピューター社会の現在では,さらにFEPメーカーという隠れた影響力が台頭してきたわけである。
しかし,マイクロソフト,アップル,ジャストシステムの三社共同で日本語を変えようという陰謀は,じつは90年代までにやっておくべきで,もう遅いかもしれない。というのは,今からは携帯電話やPDA,あるいはプレイステーションなどのゲーム機が進出してくるので,コンピューターのFEPを独占したからといって,圧倒的多数を支配することにはならなくなってくることが予想されるからである。ナカムラの友人の間では「増井の野望」というのが有名で,近い将来,日本の入力システムはPOBoxが支配するという栄光のシナリオができあがっている。ということは,作者の増井さん(ナカムラの大学サークルの先輩)が諸橋先生や金田一先生をおさえて日本語を支配するのだろうか。恐るべし。
さて,ここでアンケートにご協力下さい。あなたはどれですか? ここで送信されたデータは,ここで結果報告する以外には使いません。(他にどんな使い方があるっていうんだ?)また,上の三つのどれかを選択したという以外の情報(IPアドレス等)は届かないようにプログラムしてあるので,気軽にお答えください。現時点の結果(*)はこれです(自動集計してます)。 *実は5月2日午後6時頃まで,この表示にはバグがあって,“じょおう”派と“じょうおう”派の数を逆に表示しておりました(今は治ってます,たぶん)。ここの結果を使ってなにか新しい研究を始めたかたは,もうしわけありませんが,もう一度計算しなおしてください・・・。バグをご指摘いただいた針谷さんに感謝します。
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2001/04/20