TADAS

 この文章をお読みの方々はナカムラのことをナカムラと思っていらっしゃる方が多いだろう。(あたりまえじゃ。) しかし,実は直接ナカムラをご存知の方は,ナカムラを「中村」とは呼ばずに「タダス」と呼ぶほうが多数派だ。タダスというのはナカムラの姓名の名の方(日本語には「given name」にあたる単語がないので困りますね)であり,漢字では「匡」と書く。英語で名前を書くときは「Tadas」で通している。

 で,今回はその「Tadas」についてであるが,ナカムラの大学の卒業生から以下のような写真付きメールをいただいた。
 御無沙汰しております。鳥インフルエンザの広まる昨今いかがお過ごしですか? さて、先生は御存じかも知れませんが、飲んだら一発で疫病にかかりそうな飲物を見つけたので画像をお届けします。

 げげっ。なんぢゃこりゃあぁぁ。これはイヤですねえ。たとえばあなたの名前が「よしお」だったとして,自動販売機やコンビニの棚などに「よしおくん」という文字がならんでたらヤじゃないですか? いやすでに「なっちゃん」というジュースがあるが,あれも夏子さんや菜津美さんには迷惑だろうなあ。しかも,この「TADAS」というやつは,ナカムラの忌み嫌うエセ健康路線まっしぐらじゃないか。このメールをもらってからネットで調べてみる

 健康維持をサポートする成分とともに、睡眠中に失った水分も補給できる「朝夜いたわり飲料」
だと。なんてこったい。朝起きて水分補給したけりゃ,水を飲まんかい。しかも
 コンセプトをサポートする成分として、リンゴ酸・クエン酸・食物繊維・カリウムが含まれています。
などと書くやりくちが汚い。リンゴ酸やクエン酸のようなありふれた成分を少々いれただけではさすがに「健康増進」とは書けないのだろう,それで「コンセプトをサポートする」という,いかにも安物クリエーターのプレゼンにでてきそうなフレーズでお茶を濁しているわけだ。
 そして,もっとも不愉快なのは,そうこう言っていながら,自分の名前と同じなのでなんとなく愛着がわいてきちゃったりして,「でも,結構おいしいじゃん」とか言いながら,へらへら飲んでいる近未来の自分が目に浮かぶところだ。まあ,この手の飲料はキヨホウヘンが激しく,「サスケ」だとか「マサイの戦士」だとか,ぜんぜん売れずにすぐに消えてしまうものが多いので,TADAS君には可哀想だが(*)はやく消えてくれるのを願うしかない。

* もうすでに愛着が移っているのか?

 ところで,さきほど引用したTADAS情報を探すのに,googleで「tadas」を検索したのだが,なんと! 「日本語ページを検索」のオプションをつけると,一番上にでてくるのはナカムラのページではないか! (もっともこれは2004年3月14日現在の話で,多分,すぐに清涼飲料のTADASくんにもっていかれるであろうが。) つまり,ナカムラは日本のネット上でもっとも有名なTADASくんなのである。やるなあ。Coca-cola companyがこの事実に気づいてCMの出演依頼がきたらどうしよう。コンビニの入口付近にナカムラが不良高校生座りをしてると,松島ナナコ(漢字わからん,嶋だっけ?)がスキー履いてわけわからん歌をうたいながら通りすぎる,ってやつだったらやってもいいなあ。(あれは別の会社?) しかし公務員のアルバイトは禁止になっているので,ダメかな。Coca-cola広報担当のみんさん,出演依頼は福井県立大学が独立行政法人になってからにしてください。
 なお,田崎氏から聞くところによると,googleの順位は「.ac.jp」のドメインだとゲタはかせてもらって上位に来るらしく,ナカムラのページが上になるのはそれが原因らしい。多分,googleは「.ac.jp」だと大学とか研究機関とかだから有益な情報を含むであろうと思って,そういう仕様にしているのであろうが,ナカムラのページに限って言えば「しょうもないジョーク」とかしかないので見当違いであろうなあ。ゲタをはかせてもらってトップになっているのでは,市井のしょうもないジョーカーたちに申し訳ない気もする。ちなみに日本語オプションをつけずにgoogleで検索すると,世界中には結構Tadasくんがいますね。こいつなんか,かなり怪しげでグッド。なんでもTadasというのはリトアニアなんかでは,普通の名前らしい。

 さて,ここまで読んでこられて,「ちょっと待て,“ただす”ならローマ字で書くと正式には“Tadasu” なんじゃないか?」と思われた方もいるだろう。たしかに,ナカムラのパスポートには「Tadasu Nakamura」と書かれている。だから,普通は「本名はTadasuなんだけど,イチビってTadasなんて書いてます」なんてことを言うのだが,実はナカムラは以前からこの「本名」というやつには違和感がある。普通は戸籍に書いてある名前を「本名」と考えているようだが,語義通りに「本当の名前」としたときに,戸籍の名前が本当の名前なのだろうか? 多くの人はそうかもしれないけど,たとえば長年芸名などで通している人はそっちの方がしっくりくるだろうし,長期ひきこもりでネットの世界でしか外部とつながりがない人なんかは,いわゆるハンドルネームの方が本物の自分のような気がすることもあろう。
 ナカムラの感覚では,本名というのはセルフアイデンティティーを反映するもので,戸籍上の名前というのは単にお役所仕事のために登録しておく記号でしかない。戸籍上の名前にこだわるのは,自分のアイデンティティーの保証を国家に頼っているみたいで,なんかけったくそ悪いような気がする。だから「Tadas」の方が本名で「Tadasu」はパスポート番号に付帯している記号だと思っている。

 そう考えると,戸籍を電子化したときに自分の名前の漢字が変わってしまった,なんてのは大した問題じゃないだろう。本当にその漢字にアイデンティティーを感じるなら,戸籍など無視してオリジナルの字を使い続ければいいのだし,どうでもいいなら使いやすい漢字を使えばいい。これは,区画整理などで町名が変わるなんて話にもおんなじところがあって,たとえば郵便物なんかは御役所が決めた住所名じゃなくてもとどくわけだし,住人や訪れる人がみんな,古い地名に愛着をもって使っているのなら,それが本当の名前なわけだ。
 こういうことを書くと,いや,それは単なる観念論で,実際には国土地理院の地図と観光ガイドブックで地名がちがったりしていると不便じゃないか,と思われる方もいるだろう。また,結婚して名前を変えても,仕事上では旧姓を使っている人(なぜかというか,やはりというか,女性が圧倒的に多い)にきくと,いろいろと事務手続き上不便があるそうだ。さらに,多くのひとが勝手に名前をかえて「俺は明日から本名を変える。俺のことは“棘殺怒流鞭葡蛇撃嵐”と呼んでくれ」なんてことになったら面倒極まりないんじゃないか,という意見もあるかもしれない。いや,しかし,なんというか,まあ,その通りですね(弱気)。でもまあ,実際には戸籍名と本名が一致していても,戸籍にあるのは単に記号だよ,と思っているほうが気分がよくないですか? ナカムラのようにローマ字表記が一字違い(*)で,特に不便もなく,こんな風なゴタクが並べられるのがいちばん幸せかもしれませんね。

* 全然関係ないがローリングストーンズの「Keith Richard」の本名は「Keith Richards」だそうだ。

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2003/03/15