Jan 23, 2005

つくば冬の学校

先週は筑波大学であった「冬の学校」なるものに参加していました。その感想を:
高安氏の経済物理の話。

古典的な数理経済学の連想から、なんとなくうさん臭いイメージをもっていたが、聴いて見ると非常にしっかりした面白い話だった。
  とくに,株式市場の変動メカニズムを膨大なデータから分析するというのが面白かったが,こういうのって、心理学的価値はないのだろうか? 社会心理学の実験で、学生のバイトなんかを使って簡単なゲームをさせて意思決定のメカニズムをみるというのがあるが、集められる人間はせいぜい数十人だし、ゲームそのものも現実ばなれしていて、プレーヤーがまじめにやっているという保証はない。ところが、株式市場の場合、世界中の何万人というディーラーたちのガチンコで取り引きしている状況が株価というデータを経由して、ほぼリアルタイムで手に入るわけだ。
  もちろん、実験と違って条件のコントロールができないし、得られるデータの性質も限定的なものだが、地球物理における実験と観測のように、相補的な研究手段として使えるようになったら素敵。高安氏の話で、 Yule-Walker のフィルタを使って移動平均を最適化して、「ディーラーは数分前のデータしか気にしてない」という結論を導いていたが、これなんか結構心理学っぽい気がしません?

  ただ,経済の話となると,純粋に学問的面白さというだけでは世間は許してくれないだろう。株式市場で大もうけとか,経済政策の意志決定とか,そういう実用的な話にどこまでもって行けるか(あるいはもって行く気があるのか)というのは,この講演ではわからなかった。

早川氏のSST批判炸裂!

SSTとは田崎氏佐々氏の提唱する「定常状態熱力学」のこと。早川氏がこれに批判的であるのは業界では有名な事実らしい。プログラムを見て期待していた話だったが,期待通りの内容であった。ナカムラは単純なので,去年名古屋で田崎氏のSSTの話を聞いたときは「おお,これからはSSTの時代だ!」などと思ったものだが,早川氏の話を聴くと「やっぱSSTってやばいんじゃない?」という気になってしまう。本当はどっちなのかナカムラにはよくわからんが,とにかくこういう議論によって非平衡熱力学の理解が深まるのはよいことだ。ナカムラもこの二人の話を聴いて,非平衡流というものがどういうものかちょっとわかった気がする(←お前がいままで不勉強だっただけじゃ!)。どこかの研究会で「ケンシロウ vs カイオウ」という企画がないのかな?

水滴の構造とか真珠の強度とか

お茶の水大学の奥村氏の話。とても面白かった。宇宙の果ての銀河の形成とか,素粒子の中のクオークとか,そういう「イっちゃってる」話じゃなくても十分に面白い物理があるといういい例だ。でも,こういうのって物理を知らない普通の人はどう思うのだろう? やっぱり「イっちゃってる」系の話の方が派手でうけるのかなあ。

ということで,とても勉強になった研究会でした。みなさん,ありがとうございました。
Comments and Trackbacks

筑波ではどうも。

一応カイオウVSケンシロウは物理学会3/25午前(於東京理科大)に予定されております。予稿を書かないと。

Posted by カイオウ at 2005/01/24 (Mon) 08:48:51

名前が長いのでタイトルは略させていただきます

批判に時間とエネルギーを割いてくれる人がいらっしゃるというのはそれだけでも素晴らしいことだと思う。お互い批判もせず、ただ、ぼそぼそと論文書いているだけじゃ、アホみたいだから。

また、早川さんらのボルツマン方程式での具体的な結果は、ぼくらの議論の弱点を浮かび上がらせ、どのへんまでが大丈夫そうで、どのへんからが厳しいのかといったことを熟考するための、きわめて有益な足がかりにもなっています。

今のところ SST は、かなりなんとかなりそうな「穏健パート」(しかし、熱伝導は対称性の問題があり、完璧にクリアーとは言えない)と、さらにその上に野心的な一歩を付け加えようと言う「過激パート」に分かれており、二つの勢力が日々仁義なき抗争を展開しているというようなことはありませんが、ともかく、二段階に分けて考えています。早川さんらの結果は、とくに、この「過激パート」が一筋縄ではいかないぞということを浮き彫りにしてくれます。今は、「穏健パート」をよりいっそう堅実にして、そこを基盤にして、なんとか「過激パート」をも攻略しようと日々おろおろと散歩をしている次第です。

25日のシンポジウムは、元ラオウさまを座長におむかえし、粛々と進めることになっております。早川さんは、じゃない、カイオウ殿は粉体の話で手一杯だろうから、ボルツマンで「過激パート」の設定を素直に再現するとうまくいかない、という話はぼくの方で取り入れるつもりでいます。また相談しましょう。

Posted by たざき(ノリが悪いと言われそうだけど、おれ、全然ケンシロウとタイプちがうし(一年前と比べると筋肉ちょっとだけついたけど)) at 2005/01/24 (Mon) 14:46:10

物理学会

実はナカムラも物理学会に行きます。25日は楽しみ!でも,その前に同じく予稿を書かないと … などと言いながら現実逃避的に完全パンクマニュアルを読んでしまった。超ウケた。
http://punk-manual.cagami.net/
シュレディンガーがでてきてびっくりした。

Posted by 中村 at 2005/01/24 (Mon) 20:05:51

つくばでは講演有難うございました。

ナカムラさんの「無衝突プラズマ」の講演、興味深かったです。スケール毎に特徴的時間が異なり、大スケールの方が特徴的時間が短くて、大スケールの方から(粗視化した自由度の力学系として)熱平衡化していく、というシナリオでよさそうな気がしていて、何か定量的な解析と結びつけられると面白いな、と思っています。また、マクロに電荷分布や速度分布が変動している初期条件から、多粒子系の数値シミュレーションをやってみると、スケール毎の異なる時間での平衡化が見られるかも知れませんね。

早川さんのSST批判も面白かったです。詳細は把握していませんが、バルクに気になったのは、ナカムラさんも質問していたように、SSTは折角マクロで閉じているのに、ミクロモデル依存してしまいそうな量を何で予言してしまうの?ということです。もう一つ、SSTで「穴付近」というときは、多分マクロで見て穴に十分近いということで、ミクロのスケール(例えば平均自由行程)よりは十分離れた点を意味しているということはないでしょうか。早川さんらの解析に影響するのかは、分かりませんが。

Posted by 吉田恭 at 2005/01/25 (Tue) 22:15:03

圧力は一定

吉田さんの質問に答えておきます。まず孔近傍であろうとなかろうと定常状態では圧力は一定です。シミュレーションでも見事なまでに各セルの力学平衡は成り立っています。熱壁をもった小孔を通しての気体のやりとりで実現される定常状態では圧力は勾配の向きに依存します。そういう意味では昔の金-早川は壁を通しての接続にはナンセンスな結果しか与えていません。無論、計算で仮定したように粒子が壁の影響を受けずに透過するとしても平均自由行程の間に温度が変更してしまうのであの計算自体もナンセンスでしょう。では通常仮定するように温度変化のスケール>>平均自由行程となっているとなっているとどうなるか?そうすると残念なことに2次摂動効果は無視できます。従ってそもそもSSTの予言自体が意味がなくなります。

Posted by 早川 at 2005/01/26 (Wed) 08:56:09

非平衡状態の温度って何だ?

早川さん、質問に答えて頂いて、どうも。

別件もあって、Chapman & Cowlingとか眺めていました。

(温度変化のスケール)<(平均自由行程)というのは、局所平衡的な温度の概念の外挿が危なくなり、非平衡状態の温度の定義から検討しなくてはならない状況ではないか、と思います。早川さんらのシミュレーションは、(温度変化のスケール)<(平均自由行程)という設定なのでしょうか。また、システムサイズと平均自由行程の関係は、どうなっているのでしょうか。あまりシステムサイズが小さい場合は、孔の空いていない方の壁の影響が気になるのですが。

SSTの圧力の非平衡変数依存性の検証としては、他の熱力学的変数は変化させず行う方が望ましいと思うので、その観点では、温度勾配と連動してしまう熱流より、シアー流での運動量流束依存性を考える方が性質が良さそうに感じます。(流体速度は熱力学的変数と解釈していないから。)もっとも、シアーが強すぎると、流体力学的に不安定になって定常状態ではなくなる、という別の問題が控えていますが。

Posted by 吉田恭 at 2005/01/29 (Sat) 20:54:21

温度=運動論温度

温度は何かというのは不毛な議論なので、とりあえずシミュレーションと運動論の中では運動エネルギーの揺らぎによってのみ定義されます。それが熱力学的温度と一致する保証はないのですが、1次摂動(非平衡)では両者の一致はよく知られていますし、2次摂動以上では熱力学を持ち出す必然性も必要もないので常識的にはこの他に温度と呼ぶべきものはありません。(勿論、非平衡熱力学をやる人は別の温度を持ち出すのが通例です)。

シミュレーションのシステムサイズはかなり大きいと思います。平均自由行程よりずっと大きなバルク領域はかなり広くありますのでご安心下さい。気体のSSTに関して言えばずりに関しては何も定量的なことをいっていないので検証対象にはなりません。

Posted by 早川 at 2005/01/30 (Sun) 10:26:59

2nd econophysics seminar

5/19(14:00~)東工大経済物理学セミナーin大岡山キャンパス 百年記念館2F
詳しいアナウンスはこちらです。僕も参加(聴講)します。

Posted by nadja in wbo at 2005/05/08 (Sun) 18:02:06
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