Mar 19, 2005

BlueMountain

2月のある日の昼下がり、北陸のとある町のショッピングセンターの駐車場に一台の車が停まった。降りてきた男はちらっと空を見上げた。冬の北陸特有の鉛色の曇り空。ひとりの女の記憶が彼の脳裏にうかぶ。空が今にも泣き出しそう、こんな空を見ると彼女はよくそう言った。甘ったるいセンチメンタリズムだ。男は思った。空は泣いたりしない、地上で人が泣くだけだ。

建物の中に入った男は,とあるコーヒーショップに併設されている豆売り場に行くと、低い声で言った。 「ブルーマウンテンを200グラム」

さて、賢明な読者のみなさんは、このハードボイルドなクールガイが誰か、だいたい見当がついただろう。もちろん、わたくし、ナカムラタダスです。そう、なにを隠そう、ナカムラは畏れ多くももったいなくも、今後研究室でコーヒーを飲むときはブルーマウンテンを使うことにしたのだ。え、ブルーマウンテンってなに?という方、いかんなあ。それはジャマイカにあるブルーマウンテンという山の一帯で採れる高級コーヒー豆のことである。まあ車で言えばキャデラック、シャンパンならドン・ペリニョン、有名人なら叶姉妹に対応するゴージャス路線にあると言えばよかろうか。

高度経済成長期に育った日本人には多いと思うが、ナカムラには「ゴージャス」を実践するのに対してなんとなく「贅沢は敵です」みたいな罪悪感があり,しかも,ちょっとした贅沢をするとその罪悪感の裏返しで甘美な快感を覚えてしまう傾向があるのである。で,最近,ちょっと贅沢をしてみようと思ったわけであるが、それにはブルーマウンテンというのはすこぶるよろしい。だって、キャデラックを買おうと思ったら何百万円もするし、ドン・ペリニョンだって万円単位の金が必要だ。(叶姉妹は…パス。) しかし,ブルーマウンテンなら100グラム1300円とかで売っている。しかも,いくら高いといっても,自分で豆をひいて飲めば一杯あたりの値段にすれば数十円程度の値段になる。

思うに贅沢感というのは,普通の値段の何倍か,という単位で感じられるのではないだろうか? だとすると,キリマンジャロなどの普通のコーヒー豆は100グラム400円程度なので,ブルーマウンテンだと3倍の贅沢感が味わえる。これが車だと,もとが百万単位なので,3倍となるとちょっと手が出ない。でも,もし,車に乗る30分とコーヒーを飲む30分の間の快感が「3倍贅沢」というので同じだとすれば,ブルーマウンテン1300円というのはなんとお買い得のことか。つまり,ブルーマウンテンを買うというのは,贅沢感が×÷的計算なのに対し,財布の痛み具合は+−的計算であるという非線形性(?)を利用した高等戦略なのである。

…と完全に理論武装をしてブルーマウンテンを買いにでかけたのだが,店の前であまりの値段の高さにビビって,300グラム買おうと思ったところを200グラムにしてしまったのは,イマイチゴージャスじゃなかったかな…。でも,やっぱり美味しいです。

Edit this entry...

wikieditish message: Ready to edit this entry.
















A quick preview will be rendered here when you click "Preview" button.