Oct 22, 2007
「高学歴ワーキングプア」
最近話題の「高学歴ワーキングプア」を読んだ。実はナカムラもポスドクを2回やって,そのあとで一年ほど無職だったことがあるので,この問題はひとごととは思えない。(なんのこと? という方は「ポスドク問題」で検索してみてください。)もっとも,ナカムラが職探しをしていたころは今よりはるかに状況はよかったのだが。
で,読んでみてちょっと驚いたのだが,「行くべきか,行かざるべきか,大学院」という章で,「実は,角度を変えてみると,まだ大学院が有している魅力が見えてこないでもない」と述べて(p169),その魅力の内容として「目が開かれる」「コミュニケーションの達人へ」「生き抜く力を身に着ける」などがあげられている。
なんじゃこりゃ!? これは好きな異性と暮らす理由として,「収入が倍になるけど家賃は同じ」とか「炊事洗濯の手間が二分の一」とかをあげるようなもんじゃなかろうか。そんなことはどうでもよくて「惚れてしまったからしょうがない」という以外に理由はなかろう。大学院も,特に人生棒にふる覚悟で行く博士課程は,「研究が好きでしょうがない」という以外の理由だと,恐ろしくわりにあわない選択だと思う。理論物理だとか哲学だとかのつぶしのきかない分野は,稼ぎもなく浮気性でどうしようもないチンピラ男もしくはアバズレ女に惚れてしまったようなもので,好きじゃないとやってられないのではなかろうか。
それとは別に,もうひとつ気になったのは,いわゆるアカデミックポスト以外の就職先について「一般的な進路として,博士卒が民間に就職できる可能性は限りなくゼロに近い」と書いている(p53)ところである。本当?
たぶん,大学院博士課程卒で,民間に就職するとき,いくつかの要求レベルがあって
- 大学院で研究した内容が生かせる職場にいきたい。
- 直接研究内容が役にたたなくても,学部卒よりはいい待遇が欲しい。
- 少なくとも学部で卒業したときと同等の待遇で就職したい。
- 博士卒だからといって差別されることなく,同年代で職探しをしている人間と同じ扱いをされたい。
- なんでもいいから食べていければいい。
などが考えられるだろう。本書で「限りなくゼロに近い」と言っているのは,博士卒業者が1か2,あるいは3の上の方を求めているのに,世間では4か5しか提供されないということではなかろうか。博士卒業者としては中学→高校→大学とステップアップしてきて,さらにその上に大学院まで積んでいるのだから,それなりに処遇されていいと思っているのに,世間一般では大学の頃にセミプロのロックギタリストをやっていて,卒業してもそのままインディーズで活動してて30才過ぎました,というやつが職探しをしているのと同等にしか見てくれない。
しかし,上の1の場合は別だが,多くの場合,博士課程の卒業者はセミプロギタリスト氏と同等に扱われてしかたないだろう。たとえば,コンピューターのSE(ナカムラは無職のときに真剣に考えた)になったとき,「磁気流体波のパラメトリック共鳴が計算できます」というのはなんの長所にもならない。ギタリスト氏が「マイケルシェンカーより速弾きができます」というのと同じだ。どっちもかなり修行を積まないとできないのだが,全く役にはたたない(まだ速弾きの方が忘年会の芸になる)。いや,そんなことはない,私は学問という高級な営みを行ってきたのであり,低俗なロック野郎などとはいっしょにしないでもらいたい,と思うやつがもしいたなら,そいつは多分就職には苦労するだろうし,もし就職できたとしても職場ではハッピーじゃないだろうな。
で,はじめの話題にもどるが,大学院で本当に好きなことを5年(+α)やったのなら,4や5の就職をして,速弾き野郎と机をならべるのもわるくない人生じゃなかろうか。「お前のころはいまより状況がよくて,運良く研究職に就職できたからそんなノンキなことが言えるんだ」というお叱りをうけそうだが……。
博士卒就職
3の微修正版ですが、「少なくとも修士と同等の待遇で就職したい」というのは可能だと思います。3,4年前、いまよりもちょっと就職状況が悪かったときでも、原子核理論で博士論文を書きつつ修士の学生に混じって就職活動して民間(化学系メーカー)に就職した例を見ています。
個人的には『その道』を極めた(極めようとした)人物を尊敬するので、博士を敬うことは吝かではありません。
が、職場に雇うならマイケル・シェンカー並みのギタリストですかね、やっぱ。
うむぅ。。。
高学歴ワーキング・プアがナカムラ氏の琴線を・・・ですか。
対岸の火事のようなメタファーですね、マイケルシェンカー。読んでて笑っちゃいましたwそっち方面も明るいのでは?と思わせる一面^^
道を極めると「極道」とかがあてはまる漢字もやっかいなモノですよね。
選択肢で、4の5のと言う前に・・・
「下町育ちのような洒落の分かる人間になりたい。」と常々思う葵は・・・
こまめに更新・・・いつも楽しみにしております^^
[Science]極端大仏率 Returns! :: 「高学歴ワーキングプア」
博士の就職難の問題を扱って話題に話題になっている本らしいが私は読んだ事はない(予定もない)。 極端大仏率 Returns! なんじゃこりゃ!? これは好きな異性と暮らす理由として,「収入が倍になるけど家賃は同じ」とか「炊事洗濯の手間が二分の一」とかをあげるような
博士の就職状況は今の方が悪いというのは一見正しく思えますが、少なくともバブル経済の頃までは、大学院(特に博士課程)に今ほど気楽に進学する人は皆無でした。今就職に苦労しているポスドク達は、昔なら博士課程に進学しなかったような人たちではないでしょうか。ポストが減っているわけではありませんし(むしろかなり増えている)、また今でも優秀な人は比較的楽に就職しています。あえて違うところを挙げると、昔は地方大学でも研究できたのですが、今は格差が大きすぎて難しくなってしまった点でしょうかね。ナカムラさんが言われるように、「好きなんだからしょうがない」といえない学生が増えていることが一番問題なんでしょうね。かといって、放っておく訳にはいかないのでしょうが...
おっとっと
しばらく忙しくしているうちに、こんな楽しい(?)話題が、、。
実は短編小説(7題縛り)を5ヶ月に書いた時、就職問題を取り入れようと思って文部省のサイト(白書ですよ)を調べたんですよね。本文の趣旨とはちょっとずれるけど、せっかく調べたから(調べた内容は小説の脚注に付けています)、リンクしときます。
ま、僕の場合、目に見えて困るのは能力も意欲も無いのにデモシカで博士に行く奴。
1割行方不明というのは(笑っちゃいけないところなんでしょうが)そういえば、そういう人も、、、って感じですね
自分は博士課程どころか4年大学に進む時点で「たとえ食い詰めても好きなことが勉強できて幸せでしたと言える」心境でないと進学などできない時代だったので博士取得後無職などというのは驚くことではなかったが、だからといって今学生の人々に君たちも同じ気持ちでというつもりは無いよね。回想モードとこれからの学生のこと考えるモードは分けないとね。
コメント多謝
ポスドク問題というときに,分野によってかなり違いがあるみたいですね。「本当に優秀だったらいつか就職できる」という所と,「業界自体が構造不況で個人の才能・努力でなんとかなるもんではない」という所があると思います。理論物理とか文学系とかはかなり厳しいようです。アカデミックポスト以外への転進も,分野によって大分状況が違うでしょう。
ハリケーン様,葵様:
ナカムラは実はリッチーブラックモア世代なので,マイケルシェンカーは聴いたことがありません。もっと新しい速弾き屋の名前をしらなかったもので…。
yama様,na様:
聞くところによると,有名な「はくしが100人いる村」などで,行方不明と扱われているのは,文部科学省がその後を把握していない,という意味で,社会から消えて行ったという意味の,本当の行方不明ではないそうです。でも,本当の行方不明の率も調べてみると世間一般より結構高いことは予想されますね。速弾ギタリストも率が高そう。
エールのようなもの
該当する方々へのエールのようなものになりますが。
文系についてはわかりませんが理系限定なら5でさえも正社員の口だったりするのが多いんじゃないですかね。科学技術分野の大学院で得たものと言うのはギターの速弾きに専念して得たものよりも遙かに応用が広いでしょう。なんだかんだ言っても踏ん切りさえつければなんとか世渡りしてゆくだけの能力はあるもんだと思います。これから何らかの職業能力を学ばねばならないような人とは比較にならないでしょう。
ウェブ上を見てみると次がよくまとまっていてソースもたどれると思います。
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20070810/p2
http://scicom.jp/blog/2006/02/post_61.html
ここにもあるように「高度な専門的領域で何かを成し遂げた経験は、ちょっとしたきっかけやスキルがあれば、さまざまな職種に応用可能である」と思います。とはいえ転身するなら早いほうが有利なことも間違いありません。博士課程3年終了時というのは奇しくも将棋の奨励会退会制限年齢と同じくらいで、社会常識的には転身ぎりぎりなんですね。ただ最近は中途採用も当たり前になっているようですしポスドクというのは立派な職業なんですから、条件としては倒産等で放り出された企業の管理職と同等くらいの気持ちでいていいのではないでしょうか。
まあ欧米のようにポスドク制度が根付いていけば良いのでしょうが。
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4730/system.htm
人生いろいろ
いわゆるポスト・ポスドク問題。
問題提起としては意義があると思う。
ただ自分がそうだが、大学教員以外に道がないわけではない。(ただ大学に籍のある人はドロップアウトとみなす人もいるのが事実。)
ような研究がしたいとか教えたいというのではなく、先生と言われたいという人が多いというのではないであろうか。
高学歴ワーキングプア(書評・感想)
高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)を読む。私もまんまと大学院に行ったクチ(ただし修士)。
博士の問題
ナカムラ様
いつも楽しく読んでいます。
博士の問題は非常に難しいですが、一番良い方法は博士自身が良い意味で誇りを持ち、研究職はもちろんのこと、非研究職でも成果を出すことだと思います。どのような職に就いたとしても、さずが博士!と言われたいものです。アメリカだと分子生物学の博士号を持った公認会計士などがおられて活躍している聞きます。そうすれば、「高学歴ワーキングプア」という本も世にでなかったと思います。
私も一昨年に博士課程を修了しました。
今は地方公務員として、在学中とは少々分野が違う地方の試験機関で働いています。
やぐらけん様
激しく同意です。博士は専門オンリーで活躍するのではなく、どんな分野でも結果を出せる人間であるべきです。博士課程で学んだ論理的思考、徹底的にいちゃもんをつけてくるレビューワーを説得させるような文章の書き方、データの効率的な出し方などは、どんな分野でも役に立つスキルだと思います。もちろん、学んだ専門知識が異分野で生きる場合もあるでしょう。民間だと博士卒は学卒、修士卒の同年代ほど評価されず、博士のプライドが許さないというのはよく分かります。でもそんな人たちは、仕事で見返してやりましょう。5年間のエクストラキャリアは伊達じゃないことを見せてあげましょう。博士が社会で使えることが証明されれば、このような「ワーキングプア」の問題は自然と解決するのではないでしょうか。
子育てしながら長年大学で無給の研究員をしています。
先日、公務員をしながら子供を産みさらに学位を取られて今大学の教員になりたくてしかたないという女性に会いました。
彼女もきっと大学の雰囲気が好きなのだろうかと思ったのですが、
「大学はとても研究できて楽しいですよね。」と私が言うと、
「でも無給じゃダメよね。」と言われました。
私はそういう風に考えたことがなかったので驚きました。公務員では足りなくてたとえ小さくて名もない大学でも良いから大学教員になりたいと思う彼女は一体なぜそんな風に思うのでしょうか?
給料はもらえる時にもらえば良い。その程度のものです。
生きている時間には限りがありますから、できるだけ楽しく、
過ごしたいものです。
研究をすると、いままで知らなかったことを知るとか、新しい発見があるとか、とても楽しいです。
高学歴ワーキングプアの本も読みました。
今、周りを見ても、
本当に博士が余ってて就職先がありません。
でも、職業に出会うのも、すべてご縁だと思います。
きっといつか、みんな幸せになると思います。
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