Jun 26, 2006

お返事

先日,見知らぬ方から,自分が画期的な研究成果(たとえば「相対論に代わる理論を造った」という類,実はちょっと毛色が違うが)をあげたので,専門家として検討してくれないか,というメールをいただいた。ときおりそういうメールをいただくのであるが,いつも以下のような返信をしている。今後,いっちょナカムラにメールでも送って自分の研究を宣伝するか,と思われた方はこれを読んで考え直していただきたいです。

拝啓 **様,

おたよりありがとうございます。しかし,誠に申し訳ありませんが、お力にはなれません。お送りいただいた資料も以下にご説明する理由で,目を通していません。私のような研究者のはしくれでも、ときおり**様からいただいたようなメールを受け取ることがあるのですが、毎回同じようなお返事を差し上げています。

以下のような例え話を考えてください。ある日、突然に見ず知らずの他人から「新潟の山奥にサウジアラビア並の油田を発見しました。これで日本のエネルギー問題は解決するはずです。つきましては採掘の資金が足りないので,投資をお願いします。」というメールを受け取ったとしたら、どう思われるでしょうか? ごくまれに、よし、これは大もうけのチャンスだ、と出資する人もいるでしょうが、大多数の人は無視すると思います。油田が見つかる可能性があまりに低いからです。多くの場合、新潟まで時間・費用をかけて確かめに行こうとはしないでしょう。

われわれ研究者は一般に油田開発ができるような財産は持ってませんが、研究時間というものはわれわれにとって財産以上に貴重な資産です。**さんのようなお問い合わせに答えようと思うと、それなりに時間を削って内容を検討しなければいけません。しかしその投資に対して石油がでる、つまりその研究が正しい可能性はきわめて低い。(もちろん,これは一般論です。冒頭に書いたとおり、**様のご研究は内容を読んでいないので判断のつけようがありません。)特に物理の専門的訓練をうけてない者によってなされた研究の場合はそうです。数学の場合はラマヌジャンという例外がいますが,物理の場合,20世紀に入ってなされた重要な物理的発見は,すべて専門的訓練をうけた研究者によってなされています。

ですから,私は**様のご研究を頭から否定するわけではありませんが,ある程度の時間をさいて内容を検討するというのはご勘弁願いたいのです。もし,ご研究が真に革命的なものだったとしたら,私の名前は,目の前に大油田がありながら見向きもしなかった頑迷無恥な科学者の典型として,後生の科学史に残るでしょうが,それは甘んじて受けいれます。

科学というものも、所詮、人間のいとなみですから、真に画期的な真理をみつけたとしても、それを科学者たちに理解させるのは並大抵のことではありません。真実を公表しさえすれば、だれか偉い人がやってきて、「おお、これはすばらしい」と言って認めてくれるというのを期待できるほど、世の中は甘くないのです。たとえばメンデルの理論は彼の存命中にはほとんど認められませんでした。ですから、もし、**様のご研究が真に革命的なものであっても、私のような研究者にそれを送ることによって世間にみとめられるようになる可能性は、ほとんどありません。もっと巧妙な戦略をとらないと、メンデルと同じ運命をたどるでしょう。

では、どういう戦略がいいのか、ときかれても私にはわかりません。思いつくのは高額の給料で専門分野の学生をやとうとか、懸賞金をつけて広く一般にその正しさを検証してもらうとかですが、そういうのが有効かどうかは不明です。ただ、確実に言えるのは私のような者に相談するのは100%無駄に終わるということです。

敬具 中村匡

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